児発、放デイを開業するための手順と必要経費

児発、放デイの実際の収益モデルを解説します
目次

児童発達支援と放課後等デイサービスの概要

児童発達支援、放課後等デイサービスは児童福祉法に基づき、障がいをもった児童に対して療育を通じて成長を支援するための事業です。

2012年の児童福祉法の改正によって新たに制度化された業態であり、障がいを持った子供が通って必要な療育を受けることから通所事業所といい、児童発達支援(児発)と放課後等デイサービス(放デイ)の2つがあります。

児童の年齢対象となる事業療育内容
0歳~6歳(小学校就学前)児童発達支援日常動作、知識や技能等の習得。集団生活への適用のための支援を行う
7歳~18歳(小学生~高校生まで)※放課後等デイサービス上記に加えて、社会人として自立していくため適応訓練を行う
※18歳以降も継続が認められる場合もあり

障がいとは身体障害、知的障害、精神障害だけではありません。市町村や各療育機関から療育の必要性があると判断された児童は受給者証を発行されますので、それをもって対象となります。いわゆるグレーゾーンのお子さんです。
ですので通所されるのはそれほど障害の程度が重くない児童も多いです

療育内容としては運動療育、学習療育など様々です。各教室ともに特徴を打ち出した療育を行い子供の成長を助けるために集団や個別でプログラムを設計しています。日常生活での基本動作や知識を習得し社会生活に適応できるような訓練を行うことが求められます。

市場規模と将来性

小学校~中学校において発達障がいの可能性のある児童は10%近くいると言われています。
また全国の特別支援学校にも約5%近くが在籍しています。それらの状況から潜在的な対象児童は200万人以上と言われており、年々事業所数は増加傾向ですが、まだ当面は需要の方が大きいと考えられており将来的にはまだ拡大していくと思われます。
(2023年9月現在の状況)

引用:第6回障害児通所支援に関する検討会 参考資料1

ビジネスとしての魅力

国の制度(児童福祉法)に沿った事業のため、報酬は9割が国から支給されます(利用者は約1割の負担)
利用者の負担が少ないことに加え、報酬単価が決められているため価格競争がなく、経費としては人件費と家賃が大部分の予想の立てやすい事業と言えます。

この事業では集客が上手くできるかどうかが成功のカギとなりますが、多くの教室では送り迎えの送迎も兼ねていることもあり、教室の利用者は少しずつ増えていくことが一般的です。途中で通所をやめることも少ないため、安定的に集客に取り組むことができます。

つまり一般的な業態とは違って教室間で競いあうようなことはなく、流行もありません。社会貢献性が高い事業です。
そのため個人事業主としての参入は認められておらず、必ず法人としての経営しか認められていません
国の制度ビジネスで民間の参入を後押ししていることと、需要が拡大していることから魅力が大きいと思います。

開所までの準備で必要な費用

運営の開始(開所)にあたってはおおよそ6~8カ月ほどの準備期間を見込む必要があります
開所する物件の家賃は開所するエリアによってかなり違いがあり、最終的には行政からの許可も必要です。
物件について地下はNG、窓が必要、など様々な基準があり全てを満たす必要があります。

また多くの事業所では送迎のため車両を準備する必要がありますが、駅近の物件などの場合は送迎をやっていない事業所もあります。都心部ほど送迎はやっていないでしょう。送迎をするかどうかは重要な選択肢になります。

最も大きいのは内装工事費です。コストを抑えるためにはここをどこまで抑えることができるかがポイントになります。最も良いのは居抜きである程度使える状態であれば100万円以内に抑えることも可能ですが、完全スケルトンの状態などからだと数百万円かかることもあるため、物件は家賃だけでなく状態も考慮に入れましょう

項目詳細金額(目安)
物件契約費礼金、敷金、保証金(家賃の数カ月程度が相場)100万円
内装工事状態によって大きく異なる。トイレは部屋内に必要100~400万円
什器、備品療育に必要な遊具など100万円
車両購入費初期は1,2台の準備が必要100~200万円
開所までの家賃内装工事やスタッフ教育のために開所の2,3か月前から必要45~75万円
(法人設立費)新たに法人として会社を設立する場合の登録免許税、定款費等25万円
平均的な10人定員の事業所

開所後に必要な運転資金

児発、放デイの売上は毎月の利用実績の請求を国保連に請求し、実際に入金されるのは翌々月になります。そのためタイムラグがあり、特に開所から3か月間は全く入金がありません。それに加えて開所直後は利用者が少ない場合が多いと思いますので当面の運転資金として6か月程度は見ておいたほうが良いです。

運営では支出の大部分は人件費と家賃です。特に人件費が最も大きいですが、この業態では有資格者を何名などの配置基準がありますので、あまり調整できるところは少ないです。無理に給与水準を低くしたり、配置職員数を必要以上に少なくすると、療育内容にも影響がでるため、いかに優秀な職員を雇えるかが成功のカギとなります。

項目詳細金額(目安)
人件費スタッフの給与(当初は3~4名を仮定)90万円/月
家賃物件の家賃15~30万円/月
光熱費など電気、ガス、水道、Wifi等通信費5万円/月
求人、広告利用者募集やスタッフ募集などの販促費5万円/月
福利厚生社会保険費、通勤費、駐車場など20万円/月
平均的な10人定員の事業所

フランチャイズ(FC)について知っておきたい2つのこと

未経験で児発、放デイを開所する場合、FCへの加盟を検討されるケースも多いと思います。
各説明会などで詳細は教えてもらいますがFC加盟は自力で開業するよりも事業運営が継続できる確率は上がると思いますが、リスクもあるため、あらゆる角度から検討するべきです。以下は必ず認識しておきましょう。

大手の看板メリット(ブランド力)はそこまで大きくはない
コンビニなどはFC大手3社で9割以上のシェアを独占しています。この業界でも全国的な大手FCや各地域限定など多くのフランチャイズが存在しますが、大手であってもシェアは高くありません

理由として考えられるのは利用される親御さんは教室を選ぶのに看板で選んだりはしませんよね。大手フランチャイズはロゴやデザインなどが洗練されていて療育も統一されていることが多いのですが、そこまでブランド力は利用者募集に影響しません。スケールメリットが活かしにくいのも大手起業が参入しにくい要因だと思います。

フランチャイズ説明会での収支モデルは実際とかけ離れているケースがある
よく見るモデルケースでは年収●千万など、驚くような金額のケースを見ることがありますが、平均的な10人定員の放デイでは毎日、定員上限の10人に達したとしても280~340万円ほどです。(10人定員の児発の場合はもう少し高い)
これが教室としての売上であり、ここから経費がひかれて残るものが利益になります。

なぜそのような収支モデルかと言うと多くの場合は、20人定員で想定しているからです。
確かに20人定員で利用者が上限いっぱいになると、近いところまでは到達すると思いますが、20人定員の教室は最初からそれなりの大きさの物件やスタッフを確保しますので、リスクも10人定員とは全く異なります。
10人定員が多いのは報酬単価の問題でこの人数が最も効率が良いこともあり、実際に新たに開所して始める方はほとんどがそうしていると思いますので、その点はよく認識しておきましょう。

開業を検討する方へ

教室運営をするには3通りの選択肢があります。児童発達支援か放課後等デイサービスか、または両方の機能をあわせ持った多機能事業所もあります。最も多いのは放デイです。児発は放デイよりも対象お子さんの年齢が低く集客が難しい反面、報酬単価は高めに設定されています。

また定員数は10人定員で運営している事業所が最も多いです。10人超でもできるのですが報酬単価が下がってしまうので最も効率的に運営できる定員数になりますので、まずは10人を基準に考えてみましょう。

平均的な必要資金は開所までの準備で600~900万円ほど、数カ月の運営資金も考えると全体で1200~1500万円程度は必要です。これに加えてフランチャイズ加盟やコンサルタント契約などをする場合はその分も別途発生します。
全て自己資金で用意できる方は少ないと思いますので金融機関からの融資を受け開所される方がほとんどです。

教室の開所までの一通りの流れは以下のとおりです

1.フランチャイズ(FC)などの説明会に参加し加盟するかどうかを検討する

2.(FCに加盟しない場合)コンサルタントや士業などサポートを検討する

3.開所を希望する地域を管轄する役所で開所が可能などうかを確認する
  ※地域によっては総量規制によって開所できないケースもあるため

4.地域条例による基準、自分のやりたい療育を考慮し、物件を探す

5.スタッフを募集する。特に児童発達支援管理者(児発管)の採用は難易度が高いが必須です

6.市に問題がないか確認してもらって許可を受ける

7.地域の関係機関、療育センターへのあいさつ、チラシ、Web等で集客し利用者を募集する

このビジネスをやるかどうかは最初の1~2で判断してください。
収益ももちろん大事ですが、困っている児童に対する療育に関心がある方にとっては魅力的な業種だと思います。

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