開業準備で法人設立後にまずやるのが物件探しです。これが決まらないと次の採用活動に進めません。
しかしこの物件探しは、この業種特有の難しさがあって、経験者でないとかなり大変です。
ここで挫折して止めてしまう方もいるみたいです。
本記事では物件を探すときの3つのポイントを記載してみます。
行政の求める物件の基準
この業種は行政の許可を受けないと開業できないため、全国一律の基準があります。またそれに上乗せする形で地域ごとの基準もあり、それらを全て満たす必要があります。
<児発、放デイの利用にあたっての主なチェック項目>
項目 | 内容 |
---|---|
指導訓練室の広さ | 療育に使用する部屋は少なくとも定員一人あたり最低でも2.47㎡以上は確保する必要がある ※例:横浜市の場合3㎡以上が必要など、地域によってバラつきがある |
禁止場所 | 市街化調整区域や風俗営業地区からの距離などについて制限あり |
必要な部屋の確保 | プライバシーが確保できている静養室、相談室、トイレなど |
トイレの数、共用の可否 | トイレは共用が認めらないケースがある |
テナントの場合、階数の制限 | 高層階や地下などはNGの場合が多い |
窓、採光の制限 | 窓や出入り口の数を指定している場合がある |
その他関係法令への適合 | 建築基準法により新耐震基準を満たしていないとダメな場合が多い ※1981年6月以降に設立された物件であればほぼ問題はない 消防法で定める自動火災報知機や消火器、避難経路など基準を満たす必要あり ※特に自動火災報知機が必要な物件でついていないと高額費用になるので注意 都市計画法などによって営業が禁止されている場合もある |
またこれらに加えて、消防法が関係してきます。
児発、放デイは同法では「特定用途の防火対象物 6項ハ」 に該当するため、自動火災報知機(自火報)を設置しなければならないケースがあるためです。
具体的には、例えばこれまで自動火災報知機を設置していなかった物件に、新たに放デイが入居することによって、全フロアに自火報の設置義務が出てくるケースなどです。自火報は高額になるケースが多く(100万以上)、基本的にその要因となる放デイ側にその費用負担がくることがほとんどなのです。自分が入居することで他のテナント分の自火報まで設置することになるのが最も最悪です。
(もちろんその費用負担をしても、それ以上に開所したいテナントであれば別です)
上記基準では建物全体の延床面積が300㎡以上で対象になってくるので、大部分のテナントは該当しているはずですが、既存の消防設備や防火区画など他条件も関係してくるため、消防署に事前に相談にいって確認してもらう必要があります。
児発、放デイの物件は、物件そのものの基準と消防法上の基準を満たさなければならない
経営者(自分)が求める希望条件
経営者が求める希望もありますよね。一般的に経営者が考慮するようなポイントを列挙してみました。
項目 | 内容 |
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家賃 | 10人定員の事業所の場合は15~25万円の間くらいに収めたいところ |
場所 | 自分の希望エリア。最初はいろんな物件を見るためできるだけ広げたほうが良い |
物件の状態 | 居抜きが望ましい。柱や床などがまだできていない完全スケルトンは工事費が高すぎるのでやめたほうが良い |
広さ | 広くても200㎡まで。※これ以上は用途変更の可能性があるためおすすめしません |
清潔さ | きれいさ、傷、色合いなど内見時に確認 |
児発、放デイは売上のほぼすべてが報酬なので、売上の上限が決まっています。
最も大きいのは人件費ですが、その次に大きいのが家賃です。
一般的な児発、放デイの収益上限を考えると家賃におかる上限は30万円くらいになると思われます。
都市部であってもこれ以上かかるようだと見送ったほうが良さそうです。
都市部の駐車場は確保が難しい
ところで放デイの場合はほとんどの事業所が送迎を行っていますが、都市部の場合は駐車場の確保も大きな問題です。
物件は見つかったけど駐車場がない、なんていうケースも珍しくありません。
しかも送迎をするような事業所の場合、多くが職員も車両で通勤しています。つまり駐車場が5~6台必要なケースもザラにあります。
個人的に児発、放デイが地方のほうがやりやすいと思っていますが、その最大の理由はこの駐車場の確保が全く違うからです。
①望ましい状態・・・物件に複数台の駐車場が附帯している
②妥協できる状態 ・・・周辺にあきらかに借りられる駐車場がある
③困っている状態 ・・・周辺に駐車場はあるが全く空きがない状態
都市部だと、③の状態になることが本当に多いです。
せっかく苦労して物件を見つけて物件基準や消防法の確認を進めていても、結局駐車場が確保できず白紙に戻ることもあります。
しつこいですが、都市部の駐車場確保は本当に全く空きがないところも多いです。
駐車場探しはインターネット情報だけでなく、自分の足でも現地に行って探してみることをおススメします。
地場の駐車場は地元不動産屋が抑えていてネット情報には出ていないものが多いからです。
それでもどうしても確保できないとなれば、送迎やスタッフの車通勤は諦めるか、他の物件にするしかないですね。
まとめ:物件探しのコツ
初めての方が児発、放デイの物件探しをするのは大変難しいです。
また知っていても、契約前に確認を適切に行っていないと、最悪行政からの許可が下りなかったり、想定以上の工事費用がかかったりしますので注意して進めていきましょう
項目 | 内容 |
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物件基準 | 市区町村の基準を把握し、すべてに適用できる物件を探す。契約前に市区町村に確認を行う。 |
消防法の適用順守 | テナントで入居する場合、自動火災報知機の設置がポイント。契約前に消防で追加工事の必要性について確認する |
駐車場の確保 | 送迎の有無、スタッフの通勤を考慮し必要台数の駐車場を確認する。ない場合は対策を考えて結論を出す |